「Pokemon GO」と為替が任天堂に与える影響－２

（※「Pokemon GO」と為替が任天堂に与える影響－１より続く）

　前回言及した通り、「Pokemon GO」が任天堂に与える影響は、「Pokemon GO」の運営会社であるナイアンティックへの出資割合が分からない限り、正確に算定することはできません。
　ところが、「Pokemon GO」と異なり、任天堂に多大な影響を明確に与えるものがあります。為替です。

　7/28に公表された最新の四半期決算を見てみます。

平成29年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕（連結）｜任天堂
www.nintendo.co.jp/ir/pdf/2016/160727.pdf

　上記画像（四半期連結損益計算書）の黄色で囲んだ項目をまとめると以下のようになります。

項目	H27.6	H28.6	増減
売上高	902億円	619億円	▲283億円
営業損益	11億円	▲51億円	▲62億円
為替損益	108億円	▲350億円	▲458億円
四半期純損益	82億円	▲245億円	▲327億円

　前期に比べると売上高も営業損益も大きく落ち込んでいることが分かります。
　ですが、最もインパクトが強いのは為替損益です。

• H27.6期の為替差益は108億円なので、営業利益11億円の10倍近くあります。
• H28.6期の為替差損は350億円なので、営業損失51億円の7倍近くあります。

　二期連続で、為替損益の規模が営業損益の規模を大きく上回っています。極論すると、任天堂の業績（営業損益）よりも、為替相場の動向（為替損益）の方が、決算書に与えるインパクトが大きかったということです。

　これだけではありません。
　包括利益計算書においても為替の影響を大きく受けます。

　上記画像（四半期連結包括利益計算書）の黄色で囲んだ項目をまとめると以下のようになります。

項目	H27.6	H28.6	増減
四半期純損益	82億円	▲245億円	▲327億円
為替換算調整勘定	101億円	▲299億円	▲400億円
四半期包括利益	295億円	▲527億円	▲822億円

　包括利益とは、海外資産や保有株式等の変動額（時価評価）を純損益に加味したものです。企業の姿を、よりリアルに把握することが可能になります。
　為替換算調整勘定とは、海外子会社等の外貨建て資産を、決算日の為替レートで円換算する際に発生するものです。

　今回の任天堂のケースにおいては、為替損益も為替換算調整勘定も半端なく大きいので、肝心の営業損益の存在がちっぽけに見えてしまいます。逆に言うと、どれだけ業績が良くても、極端に円高に振れたら、最終的にはマイナスになる可能性もあるのです。
　円安に振れれば為替差益が、逆に、円高に振れれば為替差損が生じます。為替の変動幅が大きいと、今回の任天堂のような決算になります。

　実際の為替レートを確認してみます。

米ドル/円 - FXレート・チャート - Yahoo!ファイナンス
info.finance.yahoo.co.jp/fx/detail/?code=USDJPY=FX

　上記チャートによると、

• H27.6期　1ドル120円前後
• H28.6期　1ドル102円前後

となります。20円近く円高になると、物凄く業績に影響するのですね…

　任天堂のH28.6期の四半期決算は散々な結果でした。
　ただ、「Pokemon GO」は7月開始なので、その影響が出るのは次の四半期決算以降です。いろいろ期待したいところですが、現在の円高基調が続くと厳しいかもしれません。

　ちなみに、任天堂は上記決算短信において、前提為替レートを1ドル110円としています。

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