年金返上という選択肢～お金か名誉か

少子高齢化が進行すると共に、年金制度に対する不平不満が噴出しています。年金受給年齢の引上げや年金受給額の抑制が行なわれる一方、若い世代は「払い損」..

【情報公開日】2017/09/28　【関連タグ】老後/介護保険年金

　
　少子高齢化が進行すると共に、年金制度に対する不平不満が噴出しています。年金受給年齢の引上げや年金受給額の抑制が行なわれる一方、若い世代は「払い損」と反発を強めています。
　年金制度が制度疲労が起こす状況下において、今年に入ってから年金に関する国会議員による興味深い発言が相次いでいます。

　細野豪志氏は、民進党に在籍中の6/2に以下のような発言をしています。

「名誉」を年金辞退のインセンティブに｜日経ビジネス
business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/0510000...

　65歳以上の高齢者で総資産が1億円以上の世帯がちょうど10％。4000万円以上の金融資産を持っている世帯が16％あります。これだけ裕福な高齢者がいる一方で、年金の受給を辞退している人は全国で800人ちょっとです。
（中略）年金受給を辞退してくれる人がどうしたら増えるかという話をしていたら、ある年配の方は「天皇陛下に会いたい」と言うんですよ。
（中略）もちろん、叙勲の対象者があまりに大勢となると陛下のご負担になりますから、やり方はいろいろと考えなければならないでしょう。だけど、そういう名誉をしっかり差し上げることで年金の受給を辞退していただけるなら、社会にとってはものすごくいいことじゃないですか。

　また、自民党の小泉進次郎氏は、8/25に以下のような発言をしています。

「こども保険へ年金返上を」　進次郎氏、経営者に要請｜朝日新聞
digital.asahi.com/articles/ASK8S4TP3K8SULZU008....

　小泉氏は、こども保険の枠組みの一つとして、富裕層が自主的に年金給付を受ける権利を放棄し、その分も財源に加えることを提案した。すでに複数の企業経営者が返上に応じたという。
　返上後に生活が苦しくなったら申告すれば年金給付金を戻せる仕組みや、返上者に厚生労働大臣表彰や叙勲などをする案もあげた。

　特徴的なのは両者とも老齢年金の受給辞退について言及していることです。富裕層をターゲットとしていることや、年金返上の見返りとして叙勲等の名誉を挙げていることも共通しています。

　年金受給を辞退する制度の存在さえ知らなかったので調べてみました。

年金の支給停止の申出｜日本年金機構
www.nenkin.go.jp/service/sonota/sonota/20140421...

　ポイントは以下の通りです。

年金受給権がある場合、申出により支給停止が可能。
申出による支給停止は、いつでも撤回可能。
申出による支給停止は、申出時に遡って取消すことは不可。
支給停止は、老齢基礎年金・老齢厚生年金ごとに行うことが可能。

　年金の支給停止を申し出た場合、その時点から遡って年金を受給することはできませんが、いつでも撤回することはできるとのです。ただ、何らかのインセンティブがない限り、この制度を利用する人は増えないと思われます。人間誰しも「もらえるものは、もらっておこう」という思いがありますし、歳を取れば取るほどその傾向が強くなるケースが多いように感じます。

　そういう意味では、お金よりも名誉を重んずる人をターゲットにするのは理にかなっており、細野豪志氏や小泉進次郎氏の提言は的を得ていると言えそうです。金を払ってでも叙勲などの栄誉を欲しがる人は富裕層を中心に一定数存在するので、そのような人たちをうまく取り込むことができれば老齢年金の抑制につながる可能性があります。
　ただ、実際に叙勲などを授与するにあたり、乗り越えなければならない壁が沢山ありそうですが…

　年金不正受給や高齢者所在不明問題など悪い話を聞きますし、実際問題として我が国の公的年金は制度疲労を起こしている側面はあります。ただ、「保険」としての公的年金制度でも言及している通り、基本的には素晴らしい社会制度だと考えています。この公的年金制度を長く保つためにも、細野豪志氏や小泉進次郎氏のような建設的な提言は（その是非はともかくとして）あってしかるべきだと考えます。

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