エンジェル税制とは
エンジェル税制の優遇措置、適用対象企業(ベンチャー企業)の要件、個人投資家の要件、エンジェル税制の手続きや注意点等について。
【最終更新】(※情報登録:2016/08/24)
【カテゴリ】会社経営
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エンジェル税制とは
エンジェル税制とは、ベンチャー企業に投資した個人投資家に対する税制優遇措置で、ベンチャー企業への投資を促進する政策減税です。起業の増加と日本経済の活性化が期待されます。エンジェル税制のメリット(優遇措置)A. 投資時
ベンチャー企業へ投資した年に受けられる優遇措置は、以下のいずれかとなります。いずれも対象は所得税のみです。- 優遇措置A:寄附金控除(*ベンチャー企業への投資額-2,000円)
- 優遇措置B:他の株式譲渡益から控除
B. 売却時
ベンチャー企業株式を売却して損失が出た場合、その年に受けられる優遇措置は以下の通りです。適用を受けるのは所得税と住民税で、ベンチャー企業が未上場の場合に限ります。- 損失を他の株式譲渡益と損益通算が可能。
- 損失を翌年以降3年間に渡って繰越が可能。
適用対象企業(ベンチャー企業)の要件1. 中小企業に該当するか?
資本金又は従業員数のどちらかの要件を満たしていれば中小企業に該当します。業種 | 資本金の上限 | 従業員数の上限 |
---|---|---|
ゴム製品製造業 | 3億円 | 900人 |
製造業・建設業・運輸業・その他の業種 | 3億円 | 300人 |
ソフトウェア業、情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
サービス業 | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
2. 新規性要件を満たすか?A. 優遇措置A
直近の営業キャッシュフローが赤字で、かつ、以下のいずれかの要件を満たしていればベンチャー企業(優遇措置A)に該当します。なお、最初の事業年度が未経過の場合、要件は研究者等のみです(直近の営業キャッシュフローは不要)。設立経過年数 | 研究者等 | 試験研究費等 |
---|---|---|
1年未満 | 研究者等(*注2)が2人以上で常勤社員の10%以上 | - |
1年以上2年未満 | 新事業活動従事者(*注1)が2人以上で常勤社員の10%以上 | 収入の3%超 |
2年以上3年未満 | - |
B. 優遇措置B
以下のいずれかの要件を満たしていればベンチャー企業(優遇措置B)に該当します。設立経過年数 | 研究者等 | 試験研究費等 |
---|---|---|
1年未満 | 研究者等が2人以上で常勤社員の10%以上 | - |
1年以上2年未満 | 新事業活動従事者(*注1)が2人以上で常勤社員の10%以上 | 収入の3%超 |
2年以上5年未満 | - | |
5年以上10年未満 | 収入の5%超 |
- 新事業活動従事者(*注1)
- 新事業活動従事者(*広告宣伝や市場調査の企画の実施者)
- 研究者等(*注2)
- 研究者(*試験研究費等に含まれる支出)あるいは新事業活動従事者
3. 株主要件等を満たしているか?
ベンチャー企業は以下の全ての株主要件を満たす必要があります。- 「特定の株主グループ」の保有株数の合計が6分の5を超えないこと。
- 「大規模法人グループ」の所有に属さないこと。
上記2.は50%超を一つの「大規模法人グループ」に保有されていないこと、及び、3分の2以上を複数の「大規模法人グループ」に保有されていないことを指します。
この他に、未上場の株式会社で風俗営業等を行なわないことも要件となっています。
個人投資家の要件
個人投資家(エンジェル投資家)は以下の全ての要件を満たす必要があります。- 金銭の払込により株式を取得していること。
- 所有割合が大きいものから第3位までの株主の所有割合を順に加算し、その割合がはじめて50%超になる時の株主に属していないこと。
上記2.の適用があるのは、ベンチャー企業が同族会社の場合に限ります。同族会社でない場合、上記2.の適用はありません。なお、同族会社とは、3人以下の株主(及びその親族等)が、50%超を保有している会社を指します。
エンジェル税制の手続き
エンジェル税制の所轄庁は中小企業庁(経済産業省)、受付窓口は都道府県であり、以下のような手続きが必要となります。1. 事前確認制度を利用するケース
- ベンチャー企業は都道府県へ事前確認申請する。
- 都道府県知事はベンチャー企業へ事前確認書を交付する。
- ベンチャー企業は個人投資家へ事前確認書を提出する。
- ベンチャー企業は都道府県へ確認申請する。
- 都道府県知事はベンチャー企業へ確認書を交付する。
- ベンチャー企業は個人投資家へ確認書を提出する。
- 個人投資家は確定申告時に税務署へ確認書を提出する。
上記2.と上記5.は、それぞれ交付まで最低2週間程度要することに注意が必要です。
2. 事前確認制度を利用しないケース
- ベンチャー企業は都道府県へ確認申請する。
- 都道府県知事はベンチャー企業へ確認書を交付する。
- ベンチャー企業は個人投資家へ確認書を提出する。
- 個人投資家は確定申告時に税務署へ確認書を提出する。
上記2.は、交付まで最低2週間程度要することに注意が必要です。
3. 事前確認制度のメリットとデメリット
事前確認制度のメリットは以下の通りです。- ベンチャー企業は個人投資家に対してエンジェル税制適用対象企業であることを説明できる。
- 中小企業庁のホームページで会社名等が公表される。
- 申請手続きが2回必要なので事務負担が増える。
- 申請手続きが2回必要なのでスケジュールがタイトになる。
エンジェル税制の注意点
エンジェル税制には、いくつか注意点があります。- 申請から交付まで最低2週間程度かかる。
- 投資時の優遇措置は所得税のみに適用される。
- 売却時の所得税を考慮すると、かえって納税額が増える可能性がある。
上記2.については、投資時の優遇措置はAもBも所得税だけで、住民税には適用されません。そのため節税効果は限定的となるだけなく、売却時の優遇措置を受ける際に所得税の「みなし取得価格」が住民税の計算においても適用されてしまう可能性があります。
上記3.は、投資時の優遇措置を適用した場合、売却時における所得価格がその分減ります。よって、ベンチャー企業株式を売却して利益が出た場合には、納税額が増える可能性があります。
エンジェル税制のご案内|中小企業庁
www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/angel/index....
事前確認制度の概要および確認企業一覧|中小企業庁
www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/angel/compan...
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- エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)のご案内 経済産業省 www.meti.go.jp
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