レセプト債や診療報酬債権のリスクについて調べてみた

更新日: 公開日:2015/11/12

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※レセプト債に関連する情報が入りしだい、コンテンツ内容を適宜更新します。

 「レセプト債」を発行していた会社が、11月6日に破綻しました。

破産手続開始の申立てについてのご連絡|株式会社オプティファクター
www.opti-f.co.jp/files/gorenraku...

 上記発表によると、「レセプト債」とは、診療報酬債権の購入するために発行する債券(社債)で、以下のようなスキームで運用されます。
  1. 「レセプト債」を発行して、証券会社を通して一般投資家から資金調達。
  2. 「レセプト債」発行者は、その資金で医療機関から診療報酬(レセプト)債権を購入。
  3. 「レセプト債」発行者は、そこで手数料収入を得る。
  4. 「レセプト債」発行者は、一般投資家に対して「レセプト債」の償還まで決められた利子を支払う。
  5. 「レセプト債」発行者は、一般投資家に対して決められた日に償還する。

 仕組み自体は理解できましたが、そもそもレセプト(診療報酬)についてあまり分かっていません。そのため「レセプト債」のリスクなど、今一つピンときません。
 と言うことで、レセプト(診療報酬)について調べてみました。

診療報酬制度について|厚生労働省
www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/...
診療報酬制度について|厚生労働省
 主要プレーヤーは以下の4者です。
  • 被保険者(患者)
  • 医療機関
  • 医療保険者(市町村国保、健康保険組合など)
  • 審査支払機関(支払基金など)

 被保険者(患者)は受診した際、医療機関に対して料金を支払います。保険診療であれば、一部負担(20~30%)で済みます。料金の残りは、市町村国保や健康保険組合などの医療保険者が負担します。
 この医療保険者が負担する料金が、診療報酬と呼ばれるものです。

 審査支払機関の社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金という)の診療報酬の審査・支払業務 -業務の流れ- をもとに、診療報酬(レセプト)の流れをまとめてみました。

1.受付|社会保険診療報酬支払基金
www.ssk.or.jp/seikyushiharai/gyo...
  • 医療機関は、診療翌月10日までにレセプトを支払基金に提出。

4.計数整理|社会保険診療報酬支払基金
www.ssk.or.jp/seikyushiharai/gyo...
  • 支払基金は、審査結果などを踏まえた増減点連絡書を医療機関に通知。

6.請求|社会保険診療報酬支払基金
www.ssk.or.jp/seikyushiharai/gyo...
  • 支払基金は、診療翌々月10日までに診療報酬を医療保険者に請求。
  • 医療保険者は、診療翌々月20日までに請求金額を支払基金に支払い。

7.支払|社会保険診療報酬支払基金
www.ssk.or.jp/seikyushiharai/gyo...
  • 支払基金は、診療報酬を、診療翌々月21日までに医療機関に支払い。
 
 具体例として、11月30日に医療機関が被保険者(患者)を診察したケースについて考えてみます。
  1. 被保険者(患者)は、11月30日に料金(一部負担分)を医療機関に支払う。
  2. 医療機関は、12月10日までにレセプトを支払基金に提出。
  3. 支払基金は、増減点連絡書を医療機関に通知。
  4. 支払基金は、1月10日までに診療報酬を医療保険者に請求。
  5. 医療保険者は、1月20日までに請求金額を支払基金に支払う。
  6. 支払基金は、1月21日までに診療報酬を医療機関が指定する銀行口座に支払う。

 11月30日受診で、1月21日支払なので、診療報酬の回収期間は53日です。仮に11月1日受診であれば82日です。いずれにせよ3ヶ月以内なので、売掛債権のサイクルとしては、短くありませんが、とりたてて長くもありません。

 医療機関は、上記2.の12月10日の時点で、診療報酬(レセプト)債権を譲渡します。診療報酬債権を譲り受ける立場からすると、レセプト不正請求等で減額される可能性があるので、譲渡時点に全額支払われることはないと思われます。
 医療機関が診療報酬債権を譲渡して、その対価を受け取ることができるのは、12月10日前後ということになります。

 売掛債権の回収は、1月21日が12月10日に変わるので、約40日早まります。この40日をどう評価するかですが、魅力を感じる医療機関は、さほど多くないように思われます。
 ただ、「診療報酬債権ファクタリング」で商売をしている会社は結構あるので、一定の需要はあるのかもしれません。

診療・介護・調剤報酬債権ファクタリングサービスを拡大|オリックス
www.orix.co.jp/grp/news/2011/110...
  • 割引率:1.0%
  • 買受債権の上限は85%(差額は医療機関に返金)

 また、診療報酬債権をキャッシュ化するには、診療報酬債権を担保に入れて借り入れるという手法もあります。

医療機関向けローン - 診療報酬担保等|ビジネクスト
www.businext.co.jp/products/medi...
  • 年利:5.0%~15.0%

診療(介護)報酬債権担保ローン|昭和リース
www.s-l.co.jp/finance/medical-loan/
  • 年利:2.5~9.0%
  • 事務手数料:0.2~3.0%

診療報酬債権担保ローン|ベルシステム
www.bellesystem.co.jp/loan/medic...
  • 年利:8.0%~15.0%

診療報酬担保ローン(メディカルサポート)|ライフカード
www.lifecard.co.jp/partner/medic...
  • 年利:4.98%~15.00%

 以上のように、診療報酬債権をキャッシュ化する仕組みは結構ありますし、大企業の参入も目立ちます。よって、診療報酬債権を利用するスキーム自体に問題があるとは思えません。

 診療報酬債権キャッシュ化によって想定されるリスクは以下の通りです。
  1. レセプト不正請求等による診療報酬債権の減額。
  2. 医療保険者の破綻による診療報酬債権の回収不能。
 上記1.については、診療報酬債権の支払回数を複数に分けることや、診療報酬債権の買取上限を設定することで、ある程度は回避できます。
 上記2.については、医療保険者は公的機関なので、日本国と同等の信頼性があると判断されます。よって、診療報酬債権のリスクは、非常に限定的だと思われます。

 では、今回破綻した「レセプト債」のリスクは少なかったのでしょうか。

 「レセプト債」発行に関連して破綻した会社は、全部で5社あります。内訳は、運用会社2社、レセプトファンド3社です。
 このうち「レセプト債」に直接関係するのは、「レセプト債」という社債を発行したレセプトファンド3社です。

 レセプトファンド3社の資産負債状況は以下の通りです。

オプティ・メディックス・リミテッド(英領バージン諸島。設立2003年3月)

  • 総資産:124億9,700万円(2014年12月)
  • 総負債:129億3,100万円(2014年12月)
  • 純資産:▲4億3,400万円(2014年12月)

株式会社メディカル・リレーションズ・リミテッド(東京都新宿区。設立2004年7月)

  • 総資産:39億4,100万円(2015年4月)
  • 総負債:44億4,700万円(2015年4月)
  • 純資産:▲5億600万円(2015年4月)

メディカル・トレンド・リミテッド(英領バージン諸島。設立2009年12月)

  • 総資産:48億4,800万円(2015年3月)
  • 総負債:56億6,700万円(2015年3月)
  • 純資産:▲8億1,900万円(2015年3月)

 公表値は以上の通りですが、
決算書に実態が不明又は実在性の確認できない資産や売上が多額に計上され、3ファンドの有する現預金や診療報酬債権等のうち、実在性のあることが確認できた資産の合計額は、3ファンドの債券の発行残高に比べて明らかに僅少であることが判明
とのことです。

 すなわち、「レセプト債」については
平成27年10月現在3ファンドの発行済債券残高約227億円
という状況ですが、その大半については資産の裏付けがないと言うことです。

 繰り返しますが「レセプト債」とは、レセプトファンド3社が発行した社債です。あくまでも会社法第676条等で規定される社債ですので、国債や地方債のような公的保証などありません。
 「レセプト債」が信用リスクは、レセプトファンド3社の信用力に依存します。極端な話し、診療報酬債権の信用力は関係ありません。当然ですが「レセプト債=診療報酬債権」ではないのです。

 仮に、診療報酬債権を手堅く運用していたとしても、放漫経営をすれば会社は破綻します。
 診療報酬債権の信用リスクは少ないと判断できますが、運用会社の信用状況について判断することは非常に難しいです。有価証券報告書を提出している会社であれば、ある程度は判断できますが、それ以外の財務状況等の開示が不十分な会社についてはお手上げです。

 「レセプト債」は、証券会社を通して販売しているので、公募債だと推測されます(金融商品取引法第2条第3項第1号)。また、公募債を発行する場合、有価証券届出書(同法第4条第1項、第5条第1項)等の開示書類の提出が必要です。
 ところが、EDINETで検索する限り、レセプトファンド3社の開示書類は一つも出てきません。探し方が悪いのでしょうか、それとも…
disclosure.edinet-fsa.go.jp/

 ロイターの記事によると、以下の証券会社7社が「レセプト債」を販売したようです。

監視委、レセプト債購入の証券会社を調査=関係筋
jp.reuters.com/article/2015/11/0...
  • アーツ証券
  • 田原証券
  • 竹松証券
  • 六和証券
  • 上光証券
  • 共和証券
  • おきなわ証券
 なお、証券取引等監視委員会や金融庁等の公的機関から(現時点では)アナウンスがされていないので確定的な情報ではありません。

【追記】2016年1月30日
 公的機関からアナウンスがありました。アーツ証券を含め、上記の証券会社7社が明記されているので確定的です。

アーツ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について|証券取引等監視委員会
kantou.mof.go.jp/rizai/pagekthp0...
アーツ証券株式会社に対する行政処分について|関東財務局
www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2016/2...

 レセプトファンド3社の破綻処理が終わると、「レセプト債」という社債の各債権者は、残余財産に対する持ち分割合を限度に配当を受け取ります。残余財産が多ければ100%戻ってきますが、破綻会社の発表文を読む限り、戻ってくる額は多くないように感じます。

 今回のようなリスクのある金融商品を回避する方法はあるのでしょうか。

 一つ目は、事前に発行会社について調べることです。同様に、金融商品を取り扱っている証券会社等についても調べます。
  • 所轄官庁への登録が法令により義務付けられている場合、登録されているか否か。
  • 上記の登録がされていた場合、過去に警告等の処分を受けたことがあるか否か。
  • 上場会社(のグループ会社)であるか否か。
  • 有価証券報告書等の開示が法令で義務付けられている場合、開示されているか否か。
  • 上記が開示されていた場合、発行会社の財務状況が良好か否か。
 二つ目は、金融商品について調べることです。
  • 金融商品に関連する法令や条文を確認する。
  • 金融商品の約款を確認する。
  • 金融商品のスキームを確認する。
 この2つにより、リスクについてある程度知ることが可能です。開示が義務付けられているにも関わらず、開示されていない文書や情報があれば、開示を求めたり、不開示理由を確認したりします。少しでも不明な点があれば、発行会社に質問したり、専門家に相談したりします。
 また、金融機関等であれば、破綻した場合に保護される範囲について、確認しておいた方がいいと思います。

おすすめの資産運用情報


 破綻会社の発表文には、10月29日に証券取引等監視委員会の調査を受けた旨記載されています。
 いずれ証券取引等監視委員会等から何らかの公式発表があると思われます。

おすすめの資産運用情報


参考情報

 「レセプト債」の運用会社2社の資産負債状況は以下の通りです。
 

株式会社オプティファクター(東京都品川区。設立2000年9月)

www.opti-f.co.jp/
  • 総資産:62億1,100万円(2014年8月)
  • 総負債:61億3,200万円(2014年8月)
  • 純資産:7,900万円(2014年8月)

 この他に、株式会社エム・アイ・ファシリティズも破綻していますが、資産負債状況は(現時点で)公表されていません。

株式会社エム・アイ・ファシリティズ(東京都品川区。設立2005年9月)

mif-jp.com/

 ところで、この株式会社エム・アイ・ファシリティズですが、会社内に「メディカル・インプルーブメント研究会」という組織があります。
www.mia-jp.org/all/information.html
 医療機関向けのセミナーも開催しています。
www.mia-jp.org/all/open.html

 株式会社エム・アイ・ファシリティズの下記ページ(※キャッシュ)から、メディカル・インプルーブメント研究会と株式会社オプティファクターへリンクされています(されていました)。

医療債権の買取り及び販売・仲介に関する一切の業務
webcache.googleusercontent.com/s...
 

追記

 動きがあった分について、情報を適宜追加していきます。


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