資産管理会社とは (*2015年版)
*この資産運用情報は2015年時点のものです。直近のものは「資産管理会社」をご確認ください。
資産管理会社の特徴
金融資産や不動産などの資産管理を目的とする会社のことです。主に節税のメリットがあります。資産運用額が一定程度を超えた場合、個人ではなく、会社として管理することを検討します。
資産管理会社の利点
- 本人への報酬や退職金が会社の必要経費になる
- 役員報酬や役員退職金を受け取ると、所得税では給与所得控除や退職所得控除が適用され、税負担が軽減される。
- 同一生計親族へ報酬や退職金を出しやすくなる
- 所得を親族に分散化することで、税負担の軽減が期待できる。
- 不動産や有価証券などの売却損が他の収入と通算される
- 不動産や有価証券、FXなどの売却損については、個人では他の収入や所得と通算することができない。
- 必要経費と認められるものが増える
- 会合での食事代(会議費)、パソコンやプリンター等(消耗品費)、役員の社宅家賃の一部(支払家賃)、役員の生命保険料、出張時の日当(要.旅費規程)など。
- 相続税対策として有効
- 詳細については後述。
- 保有資産の明確化
- 本人(あるいは同一生計親族)の保有資産を明確にし、資産残高を把握することが可能。相続対策を検討する際にも有効。
資産管理会社の欠点
- 法人の設立維持費用がかかる
- 比較的コストの安い合同会社や一般社団法人でも、設立時だけでなく毎年一定の費用(地方税の均等割等)が必要となる。
- 社会保険料の事業主負担がかかる
- 役員報酬を支払う場合、原則的に法人は社会保険料を半額負担しなければならない。
- 経理事務の負担が増える
- 毎年法人税の申告をする必要があるので、日常的な記帳や決算期の決算書作成などの経理事務が必要となる。
個人事業主と法人の比較一覧
個人事業主と法人について比較してみました。法人の場合、同一生計親族(本人を含む)は役員として取り扱います。より詳しくは「法人の節税」をご確認ください。項目 | 個人事業主 | 法人 |
最高税率 | 55.9% (所得4,000万円超。所得税45.9%+住民税10%) | 37% (注1) |
損益通算 | 所得区分によっては可能 (不動産・事業・譲渡・山林) | 可能 |
繰越控除 | 最大3年間 | 最大9年間 |
旅費交通費 | 実費のみ経費計上 | 日当等も損金算入可能 (旅費規程等が必要) |
自分の給料 | 認められない | 役員報酬として損金算入 |
同一生計親族 への給料 | 専従者給与として経費計上 (専従の実態が必要) | 役員報酬として損金算入 |
自分の退職金 | 認められない | 役員退職金として損金算入 (退職金規程があった方がよい) |
同一生計親族 への退職金 | 認められない | 役員退職金として損金算入 (退職金規程があった方がよい) |
自分の生命保険 | 生命保険料控除額が上限 | 支払保険料として全額損金算入 (原則的に掛捨て部分のみ) |
同一生計親族 への生命保険 | 生命保険料控除額が上限 | 支払保険料として全額損金算入 (原則的に掛捨て部分のみ) |
福利厚生費 | 従業員分のみ経費計上(除.家族) | 役員を含めて全額損金算入 (福利厚生規程等が必要) |
地代家賃 | 同一生計親族間で経費計上不可 | 法人個人間で損金算入 |
交際費 | 全額経費計上 | 年800万円まで全額損金算入 (中小法人等に限る) |
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ダブルレクタングル会社の種類
資産管理会社に関係深い項目(剰余金や最少人数、設立コストなど)について、会社の種類別に列挙してみました。種類 | 責任 | 剰余金 | 法人格 | 最少人数 | 設立コスト | 設立事務量 | 備考 |
株式会社 | 有限 | 分配可能 | あり | 1人 | 24万円~* | 少なめ | *電子定款は印紙代不要 |
合同会社 | 有限 | 分配可能 | あり | 1人 | 10万円~* | 少ない | *電子定款は印紙代不要 |
合資会社 | 有限 無限 | 分配可能 | あり | 2人 | 10万円~* | 少ない | *電子定款は印紙代不要 |
合名会社 | 無限 | 分配可能 | あり | 1人 | 10万円~* | 少ない | *電子定款は印紙代不要 |
特定目的会社 | 有限 | 分配可能 | あり | 2人 | 8万円~ | 多い | 不動産関連 |
有限責任 事業組合 | 有限 | 構成員課税 | なし | 2人 | 6万円~ | 少ない | 日本版LLP |
企業組合 | 有限 | 制限あり | なし | 4人 | 0円 | 非常に多い | 県知事が認可 |
一般 社団法人 | 有限 | 分配不可 | あり | 2人 | 11万円~ | 少ない | 非営利型法人が可能 公益認定制度あり |
一般 財団法人 | 有限 | 分配不可 | あり | 7人 | 11万円~ | 少ない | 非営利型法人が可能 公益認定制度あり |
NPO法人 | 有限 | 分配不可 | あり | 10人 | 0円 | 非常に多い | 行政庁が認可 |
個人事業 | 無限 | - | なし | 1人 | 0円 | なし |
資産管理会社にふさわしい会社の種類
- 人数は少ない方が良い
- 意思決定等に関与する人間は少ない方がいいので、最少人数が1~2人のものを選択。
- 有限責任の方が良い
- リスクを低減化させるために、有限責任のものを選択。
- 法人格がある方が良い。
- 役員報酬等を利用して節税したいので、法人格があるものを選択。
- 手間と費用は少ない方が良い
- 可能な限り設立コストと設立事務量が少ないのものを選択。
種類 | 最少人数 | 剰余金 | 設立コスト | 決算公告 | 備考 |
株式会社 | 1人 | 分配可能 | 24万円~* | 必要 | *電子定款ならば20万円~ |
合同会社 | 1人 | 分配可能 | 10万円~* | 不要 | *電子定款ならば6万円~ |
一般社団法人 | 2人 | 分配不可 | 11万円~ | 必要 | 非営利型法人が可能 公益認定制度あり |
設立コストや剰余金の扱い、決算公告の有無などから、資産管理会社にふさわしい形態として合同会社が第一に挙げられます。
ただし、合同会社の場合、「相続による持分承継の定め」が定款に記載されていない限り、社員の持分が相続人に引き継がれません。また、定款に「相続による持分承継の定め」が記載されていたとしても、相続人が複数存在する場合、相続人全員が社員の地位を承継することになります。遺産分割協議等によって特定の相続人だけが社員の地位を相続することはできないので、相続人全員が一旦社員となった後に、各持分を譲渡するという面倒な手続きが必要となり、トラブルの元になりかねません。
ゆえに、相続時のトラブルを回避することを最優先するのであれば、合同会社ではなく、株式会社を選択するのも一つの方策です。
なお、資産管理会社という性格上難しいですが、税制上の優遇措置がある非営利型一般社団法人という選択肢もあります。ただし、この場合、理事総数に占める親族の割合を3分の1以下にする必要があるので、最低人数を3人(実務上は6人)にしなければなりません。
相続税対策
- 遺産分割についての考察
- 相続人が多い場合、遺産分割で争う事例が後をたちません。現預金や国債などの金融資産であれば分割しやすいのですが、不動産となると簡単にはいきません。
- 土地を分筆するには少なからぬ費用がかかりますし、共有持分とすると権利関係が複雑になるので将来売却する際に禍根を残すことになりかねません。
- 個人間で金融資産や不動産を相続するより、事前に資産を法人(資産管理会社)に移し、株式という形で相続する方が有利になるケースがあります。
- 資産管理会社を利用した相続
- 「取引相場のない株式」を相続する場合、その他の資産に比べて評価が低くなる可能性があります。資産管理会社の株式は「取引相場のない株式」なので、純資産価額方式か類似業種比準方式、それらの併用方式で評価することになります。一般的に類似業種比準方式の方が評価が低くなる傾向があるので、諸条件に合致するならば相続税が軽減されます。
- 「取引相場のない株式」については、相続ではなく贈与する方法もあります。この場合、資産管理会社が保有する資産(上場株式や不動産)の価値が下がっていると思われるタイミング(例:金融危機)に、株式持分を贈与するのが有利です。もちろん一度に全ての株式持分を贈与する必要はなく、受贈者の担税能力に応じて贈与します。
- 「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予」を受けられるかもしれません。ただし、要件は厳しく、資産管理会社であれば事業実態が存在する必要があります(後継者とその後継者と生計を一にする親族以外の常勤従業員が5人以上など)。なお、資産管理会社が持株会社に該当するならば要件が緩和されるので、複数の法人を使って納税猶予の適用を目指すことも考えられます。
- 資産管理会社の株式の評価を含め、相続税対策については、税法や通達に精通している必要がある上、法改正が毎年のように行われるので、経験豊富な税金専門家の助言を受けることをお勧めします。
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