経営セーフティ共済とは
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の賢い活用法を具体的に解説。優遇された掛金の前納制度(前納分も損金算入・前納減額金)等。
【最終更新】(※情報登録:2015/10/29)
【カテゴリ】会社経営
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経営セーフティ共済とは
取引先が倒産する可能性はゼロではありません。経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、そのような取引先倒産等の緊急事態に備える共済制度です。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しているので、公的なセーフティーネットと言えます。経営セーフティ共済|経営セーフティ共済(中小機構)
www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/index.html
主な特徴は以下の通りです。
- 取引先の売掛債権が回収不能時に、掛金総額の10倍(最高8,000万円)を上限に無利子融資。
- 1年以上事業を営む中小企業者が対象。業種による資本金と従業員数の基準あり。
- 掛金は月5,000円~20万円。掛金総額の上限800万円。
- 掛金は全額経費。40ヶ月以上の掛金納付で、掛金が全額戻ってくる。
- 優遇された掛金前納制度①(※1年以内の前納分は支払った事業年度に損金算入)。
- 優遇された掛金前納制度②(※前納減額金あり)。
最高8,000万円の無利子融資
取引先の倒産により売掛債権の回収が困難となった場合、共済金(最高8,000万円)の貸付けを無利子無担保で受けることができます。取引先の倒産
以下のケースが取引先の倒産に該当します。取引先が夜逃げした場合などは該当しません。- 法的整理
- 取引停止処分
- でんさいネットの取引停止処分
- 私的整理
- 災害による不渡り
- 災害によるでんさいの支払不能
- 特定非常災害による支払不能
共済の貸付条件
原則的として、貸付額は50万円~8,000万円で、5万円単位の貸付けとなります。ただし、以下の2つのうち少ない額が貸付上限となります。- 回収困難になった売掛債権
- 掛金総額の10倍
- 5,000万円未満 … 5年
- 5,000万円以上6,500万円未満 … 6年
- 6,500万円以上8,000万円以下 … 7年
担保や保証人は必要ありません。
経営セーフティ共済の加入要件
1年以上事業を営んでいる中小企業者が要件です。中小企業だけでなく個人事業主も対象です。ただし、個人事業の場合、事業所得以外の収入(不動産所得等)は、掛金を必要経費として算入できません。業種によって基準となる資本金と従業員数が異なります。
業種 | 資本金 | 従業員数 |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業等 | 3億円以下 | 300人以下 |
製造業等 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
医療法人や農事組合法人、NPO法人、森林組合、農業協同組合、外国法人などは加入対象になりません。
加入手続きは、商工会議所や取引のある金融機関等で行います。
掛金は月5,000円~20万円で自由に変更可能
掛金は、月5,000円~20万円(5,000円単位)で自由に選択できます。納付は預金口座振替となります。月単位で掛金を増減させることも可能です。
減額は以下のいずれかに該当する必要があるので注意が必要です。
- 共済契約者の事業規模が縮小されたとき
- 事業経営の著しい悪化、病気またはけが、急な費用の支出などにより、掛金の納付を継続することが著しく困難であるとき
- 共済金の貸付残高と掛金総額の10倍に相当する額との合計額が、8,000万円に達しているとき
原則的として掛金を毎月納付しますが、一括して前納することも可能です。
掛金は全額経費&40ヶ月以降に全額戻る
経営セーフティ共済の掛金については、全額を経費として処理できます。法人の場合、法人税申告時に下記書類の添付が損金算入の要件です。
- 特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書
- 適用額明細書
40ヶ月(3年4ヶ月)以降に中途解約した場合、掛金は全額戻ってきます。解約時には全額を収入(益金)として計上します。
なお、経営セーフティ共済を退職金の原資として活用することも可能です。(参考:経営セーフティ共済で節税)
優遇された掛金前納制度①
掛金を前納した場合、1年以内の前納分については、支払った事業年度に損金算入することが可能です。1年以内の短期前払費用と同様の取扱いがされます。優遇された掛金前納制度②
掛金を前納すると、前納減額金が受け取れます。- 前納減額金=掛金月額×1,000分の0.9×(前納月数の累計)
【注意】中小企業基盤整備機構は、制度改正(前納減額率の見直し)のお知らせを2017年8月21日に公表しています。2017年11月分より前納減額金の減額率が0.09%に引き下げられることを前提に内容を修正しました。ちなみに従来までは0.5%だったので、前納減額金が大幅に減ることになります。
12ヶ月分をまとめて前納した場合の「前納月数の累計」は以下の通りです。
- 78ヶ月=1ヶ月+2ヶ月+3ヶ月+4ヶ月+5ヶ月+6ヶ月+7ヶ月+8ヶ月+9ヶ月+10ヶ月+11ヶ月+12ヶ月
毎月、階数的に増加していくのが分かります。
例えば、月10万円の掛金を12ヶ月分まとめて支払うと、7,020円(=月10万円×1,000分の0.9×78ヶ月)の払い戻しを受けることになります(2017年10月分までの払戻額は39,000円だったので大幅に減少)。
単純利回りで0.585%(=7,020円÷(月10万円×12ヶ月))となりますが、少なくとも40ヶ月引き出すことができないので、実質的な年利は大幅に低下します。
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独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する共済制度としては、小規模企業共済があります。この制度は経営セーフティ共済以上に税制優遇措置があるのですが、解約の場合には20年以上納付しないと掛金が100%以上戻ってこない、という致命的なデメリットがあります。経営セーフティ共済の3年4ヶ月に比べると、あまりにも長すぎるので、そこをどう評価するかがポイントとなります。
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