退職金の税金
退職金の税金
退職金には所得税と住民税がかかりますが、税制優遇措置がある上に、源泉徴収(住民税は特別徴収)で課税関係が終了するので、非常に有利です。退職所得は以下のように計算します。
- 退職所得=(退職金-退職所得控除額)÷2
退職所得の具体的な計算については、「退職所得:節税計算機」をご利用ください。
退職金の支給実態
全ての人が退職金をもらえる訳ではありません。下記のいずれかに当てはまる場合、退職金をもらうことができない可能性があります。- 退職金制度が存在しない場合。
- 退職金制度が存在したとしても勤続年数が少ない場合。
- 懲戒解雇(懲戒免職)などで退職した場合。
退職金制度の有無
従業員数 | 退職金制度 | |
---|---|---|
あり | なし | |
30~99人 | 72.0% | 28.0% |
100~299人 | 82.0% | 18.0% |
300~999人 | 89.4% | 10.6% |
1,000人以上 | 93.6% | 6.4% |
合計 | 75.5% | 24.5% |
ただし、退職金制度が存在しなくても、退職金が支給される場合もあります。経営者の考えや会社の業績に左右されるので不確定要素が強いですが…
上記2.については、会社ごとに最低勤続年数が決められています。東京都労働相談情報センター「中小企業の賃金・退職金事情(平成26年度版)」によると、自己都合退職の場合は3年が、会社都合退職の場合は1年か3年が多くなっています。
退職一時金受給のための最低勤続年数
最低勤続年数 | 退職理由 | |
---|---|---|
自己都合 | 会社都合 | |
1年未満 | 1.0% | 8.2% |
1年 | 18.8% | 30.4% |
2年 | 16.6% | 11.4% |
3年 | 52.2% | 30.9% |
4年 | 1.8% | 1.3% |
5年 | 6.4% | 4.5% |
無記入 | 3.2% | 13.2% |
上記3.の懲戒解雇については言わずもがなですが、懲戒に到った非違行為の程度によっては退職金(の一部)が支払われる可能性もあります。
では、公務員の場合はどうなのでしょうか。
上記1.については、国家公務員には国家公務員退職手当法があります。
上記2.については、国家公務員の場合、6ヶ月以上勤務すると退職金が支給されます。(国家公務員退職手当法第3条、第7条第6項)
上記3.については、以前は「懲戒免職=退職金不支給」でしたが、2008年の国家公務員退職手当法改正により取扱いが変わりました。現在は、「懲戒免職等処分を受けて退職をした者」に対して「退職手当管理機関は(中略)退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる」(国家公務員退職手当法第12条)とあるように、「懲戒免職=退職金不支給」とはなりません。
なお、地方公務員については、地方自治法第204条第2項により条例で退職手当を支給することを定めています。よって、各地方自治体の退職手当に関して規定する条例は、国家公務員退職手当法に準じたものとなることが予想されます。
以上のことから、公務員の場合、6ヶ月以上勤務すれば、原則的に退職金をもらえますし、仮に懲戒免職で退職したとしても退職金の不支給に直結する訳ではないということが分かります。
退職金の支給方法
退職金の支給方法については以下のようなものがあります。- 退職一時金。
- 退職年金(確定拠出年金や確定給付企業年金等)。
- 一時金と年金の併用型。
退職金制度の内訳
従業員数 | 退職金制度 | ||
---|---|---|---|
退職一時金 | 退職年金 | 併用 | |
30~99人 | 74.1% | 8.6% | 17.3% |
100~299人 | 56.0% | 14.0% | 30.0% |
300~999人 | 31.5% | 27.2% | 41.3% |
1,000人以上 | 23.0% | 28.9% | 48.1% |
合計 | 65.8% | 11.6% | 22.6% |
退職金の計算方法
一般的に以下の算式で退職金を計算します。- 退職金=退職時の基本給×勤続年数×給付率
- 役員退職金=退職時の報酬月額×役員在任年数×功績倍率
なお、公務員については国家公務員の退職手当制度の概要が詳しいです。
退職金の支給状況
国税庁「長期時系列データ 源泉所得税 7 退職所得及び非居住者等」によると、毎年200万人前後が退職金を受け取っていることが分かります。退職金額は、一人あたり平均で500万円~600万円となっています。なお、退職所得の人数については、2006年までしか公表されていません。退職所得
年 | ①人数 | ②支払総額 | ③平均(②÷①) |
---|---|---|---|
2000年 | 199.0万人 | 12.4兆円 | 628万円 |
2001年 | 205.0万人 | 13.7兆円 | 668万円 |
2002年 | 247.5万人 | 15.8兆円 | 642万円 |
2003年 | 233.8万人 | 12.9兆円 | 555万円 |
2004年 | 236.0万人 | 12.9兆円 | 547万円 |
2005年 | 227.1万人 | 11.0兆円 | 487万円 |
2006年 | 189.2万人 | 10.7兆円 | 566万円 |
2007年 | … | 11.1兆円 | … |
2008年 | … | 10.3兆円 | … |
2009年 | … | 11.0兆円 | … |
2010年 | … | 9.8兆円 | … |
2011年 | … | 9.6兆円 | … |
2012年 | … | 10.0兆円 | … |
2013年 | … | 9.3兆円 | … |
退職金の相場
内閣官房「平成25年度 退職手当の支給状況」等により、退職金の相場が分かります。公務員・大企業・中小企業について、それぞれ勤続年数別に退職金の支給状況(大企業は標準者退職金)をまとめてみました。会社都合退職
勤続年数 | 10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
公務員 | 796.8万円 | 927.1万円 | 1,738.3万円 | 2,484.8万円 | 3,467.3万円 | 応募認定退職+勧奨。 |
大企業 | 297.5万円 | 547万円 | 877.6万円 | 1,316.4万円 | 1,804.2万円 | 大学卒。総合職。 |
204.1万円 | 374.7万円 | 594.5万円 | 921.5万円 | 1,348.8万円 | 高校卒。総合職。 | |
中小企業 | 168.1万円 | 312.5万円 | 508.9万円 | 742.4万円 | 1,020.1万円 | 大学卒。 |
121.8万円 | 226.2万円 | 374.7万円 | 547.9万円 | 759.3万円 | 高校卒。 |
自己都合退職
勤続年数 | 10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
公務員 | 264.0万円 | 551.5万円 | 967.2万円 | 1,452.9万円 | 1,822.2万円 | |
大企業 | - | - | - | - | - | 統計データなし。 |
中小企業 | 124.2万円 | 242.5万円 | 415.4万円 | 638.2万円 | 899.9万円 | 大学卒。 |
89.5万円 | 175.3万円 | 306.1万円 | 468.8万円 | 655.0万円 | 高校卒。 |
公務員「平成25年度 表2 勤続年数別退職手当受給者数及び平均退職手当 常勤職員」より作成大企業「2014年9月度 図表1 標準者退職金の支給額および支給月数─総額─」より作成中小企業「平成26年 【表4】モデル退職金」より作成
統計元データに差異があるので一概には言えませんが、公務員と民間企業、大企業と中小企業の退職金格差は、依然として存在するようです。
退職金運用定期預金
退職金を運用するための定期預金を取り扱っている金融機関が数多く存在します。しかも軒並み高金利です。一般的に退職金を受け取って1年以内という条件の定期預金が多く、退職所得の源泉徴収票等の提出が必要となります。注意したいのが、投資信託や年金受取予約といった抱き合わせ商品です。特に投資信託については、元本保証でない上に、定期預金金利以上の手数料が必要になる場合もあります。
また、退職金運用定期預金の大半は、3ヶ月や6ヶ月など預入期間が短く設定されています。定期預金の満期後に、手数料の高い投資信託を勧めてくる可能性が高いので、心の準備をしておいた方が無難です。
[本ページはプロモーションが含まれています]
関連する資産運用情報
- 関連する無料オンラインソフト
- 加算税・延滞税の計算
加算税と延滞税を同時計算。修正申告や国税局や税務署による更正等で役立つ便利ツール。 - 「年収の壁」シミュレーション比較計算ソフト
パートの時給(日給)を入力するだけで「年収の壁」ごとに労働時間・社会保険料・税金を自動計算。社会保険の種類(厚生年金・国民年金)別に負担分を自動比較。 - ふるさと納税の控除限度額計算ソフト
寄附して得する「ふるさと納税」の目安(控除限度額)を簡単計算シミュレーション。実質2000円の負担で全国の特産品がもらえます。株式投資やFX等の分離課税にも対応。 - 所得税延納にかかる利子税の最適化ソフト
所得税延納時の利子税を自動計算。延納届出額を調整して利子税を極小化。コンビニのバーコード付納付対策に最適。 - 税金社会保険計算ソフト
税金・社会保険の支払額(所得税額や都道府県民税の所得割額、厚生年金保険料など)をオンラインで同時にシミュレーションします。 - 遺産相続税診断ソフト
死亡時の遺産と相続税に加え、遺族のライフプランについてオンラインでシミュレーションします。 - 法人税額計算&個人事業比較ソフト
法人税や事業税等を簡単計算。個人事業での税金や役員報酬で受け取った場合と比較するので、起業・法人成り・資産管理会社を利用した節税検討に最適。
- 参考先リンク
- 最速節税対策 MAバンク saving.ma-bank.net
実践的な節税対策情報を、節税計算機や議事録作成ツール等のオンライン無料ツールや、税務訴訟データベース(国税不服審判所の裁決事例や裁判所の判例)等と共に無料提供 - 金融情報サイト-iFinance 株式会社エフ・ブイ・ゲート www.ifinance.ne.jp
身近な金融ナビゲーションとして、家計管理、資産運用、保険、ローン、税金などのマネー情報をワンストップで提供 - 税務会計経営情報サイト TabisLand セイコー・エプソン www.tabisland.ne.jp
日本最大級の税務・会計・経営情報ポータルサイト - 不動産の税金 住友不動産販売株式会社 www.stepon-contents.jp
住まいにまつわるさまざまな税金の知識を、身近なケースに即してわかりやすいQ&A形式でまとめました。 - 税目別に調べる 国税庁 www.nta.go.jp
調べたい内容を、「税目別」・「掲載コンテンツ別」に案内
同じカテゴリの資産運用情報
- FP1級おすすめ! 厳選ふるさと納税キャンペーン (2024/05/01 更新)
FP1級がお勧めするふるさと納税キャンペーンを紹介中。キャンペーン・特典の対象が全員(もしくは先着)の情報だけをピックアップ。 - 会社や法人の税金 (2019/07/30 更新)
会社経営にかかる税金について解説します。 - 自動車の税金 (2019/07/30 更新)
自動車の購入・保有にかかる税金について解説します。 - 不動産の税金 (2019/07/29 更新)
土地や住宅、マンションの購入・保有にかかる税金について解説します。 - ふるさと納税・お得な寄付 (2019/06/26 更新)
実質2,000円の負担で全国各地の特産品が超低リスクでもらえる「ふるさと納税」を中心に解説。所得税の寄附金控除・個人住民税の寄附金の税額控除について。 - 保険や年金の税金 (2018/02/21 更新)
保険や年金にかかる税金について解説します。保険や年金の税制優遇措置や節税方法など。 - お得な贈与相続 (2016/07/12 更新)
相続税や贈与税。贈与税を利用した節税方法、法人やジュニアNISAを利用した贈与、お得な贈与方法について解説。 - 退職金の税金 (2015/05/18 更新)
退職金の税金や支給実態(民間・公務員)、相場、支給方法、退職金専用の定期預金等についても情報提供中。 - 相続財産の探し方・調査方法・財産目録の作成 (2015/04/16 更新)
預貯金や不動産、借入金などの相続財産の探し方や調査方法について解説。財産目録の作成例あり。 - 金融資産の税金 (2015/02/27 更新)
預金や株式、投資信託などの利子・配当・譲渡益にかかる税金について解説します。
このページを他の人に教える
ご意見ご要望をお聞かせ下さい
過去のご意見ご要望については、ご意見ご要望&回答一覧で確認できます。よくある質問もお読み下さい。利用規約をお読み下さい
本サイトのご利用にあたっては利用規約を必ずお読み下さい。本サイトは断りがない限り「消費税込」で料金表示をしています。(2019/10/01)